8 1月 2017 - 11:26
ガイドは日本人ムスリムだから 礼拝も食事も楽々、安心の旅

日本を訪れるイスラム教徒(ムスリム)が激増している。食べ物や礼拝場所に配慮したムスリム向け観光ツアーを手がける旅行会社「ミヤコ国際ツーリスト」(大阪市平野区)には、業界でも珍しい日本人ムスリムのガイドがおり、「安心して楽しめる」と好評だ。インドネシア人のツアーに同行し、日本のムスリム受け入れの現場をのぞいた。【中本泰代】

「アッサラームアライクム、バスは今から東京ジャーミイ(渋谷区のモスク)に向かいます」。昨年11月下旬の東京。ミヤコ国際ツーリスト社員でムスリムの三好良磨(りょうま)さん(28)が英語でガイドを始めた。一行は私立中・高校の研修旅行で、生徒13人と引率のクスマ・デウィさん(48)。1週間かけて都内や熱海を回る。

 ムスリムの礼拝は1日5回、旅行中は3回に短縮することが許されている。日本では礼拝場所の確保は大問題だ。「商業施設のコインロッカーの前や、ファミレスの更衣室を借りたことも」と三好さん。



東京ジャーミイで昼の礼拝を終えると、空腹を訴える声が上がり、コンビニへ。生徒たちはお菓子やパック飲料を手に、日本語が堪能なデウィさんと三好さんに駆け寄る。原材料を確かめるためだ。「乳化剤が入っている。この表示だと動物性か植物性かわからないけど、やめておきましょう」。動物性の食材は、決まった方法で処理されたものでなければならない。

 デウィさんは2年前にも研修旅行を引率したが、担当した大手旅行会社の日本人ガイドが非ムスリムで「アルコールと豚肉さえ避ければいい」などと理解不足な点も多かったため、1人で対応に追われたという。「今回は助かっています」

 東京タワーを観光し、戒律に沿った「ハラール」のメニューを出す鉄板焼き店で夕食だ。店内のディスプレーではミュージックビデオが流れ、露出の多い格好で踊る女性が映る。三好さんが店主に「刺激の少ないものに」と耳打ちし、映像はアニメに変わった。

 デウィさんは1997年から8年間、日本に留学した。「当時に比べ、日本はだいぶ過ごしやすくなりました」。特にここ1、2年、空港や駅、商業施設などで礼拝場所の整備が進み、ハラール対応の飲食店が急速に増えた。

 ファフリー・ムザキさん(16)は「日本の大学に進学したいので、この旅行で雰囲気を知りたかった。日本人は欧米の人より、ムスリムに理解があるイメージ。留学に不安はない」と話した。

違いにとらわれず

 三好さんは米国留学中の2011年、ドバイ出身の友人を通じてイスラムの教えを知り、改宗した。13年に入社し、訪日ムスリムが立ち寄れる場所や飲食店を開拓した。宗教と関わること自体を嫌がる店や、ハラールを商機としてしか考えず適当な対応をする店もある一方、まじめに考えすぎて尻込みする店も多い。「日本人は、自分たちとムスリムの常識の違いを重視しすぎる。同じ人間なんだから、本当は難しいことではないんです」

 同社の松井秀司社長(57)によると、東南アジアのムスリム観光客は、日本の先端技術や、紅葉や雪といった四季、茶道などへの関心が高いという。12人いるスタッフのうち、松井社長と三好さんの日本人2人を含む4人がムスリムで、「同胞に安心して旅を楽しんでもらい、日本を好きになってもらうことが私たちの役割」と話す。

4年で3倍超

 ムスリムの多い東南アジアからの訪日客は、2013年のビザ発給要件の緩和や、格安航空会社の就航を背景に増え続けている。日本政府観光局によると、ムスリムが人口の6割を占めるマレーシアからの15年の訪日客は約30万5400人(11年の3.7倍)、9割近いインドネシアからは約20万5000人(同3.3倍)に上った。

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ハラールのメニューがある鉄板焼き店で、焼きそばを作る様子を興味津々で見つめる一行=東京都台東区で、中本泰代撮影

モスク「東京ジャーミイ」で昼の礼拝をする生徒たち。右から2人目が日本人ムスリムのガイド、三好良磨さん=東京都渋谷区で、中本泰代撮影