11 10月 2025 - 22:11
Source: Parstoday
米国議会がインドの中ロとの緊密化を懸念し、トランプ氏に警告を発している理由とは?

複数のアメリカ議員が同国のトランプ大統領に対し、インドが中国やロシアと緊密化している現状について警告しました。

 米国議会の民主党議員ら複数名が書簡によりインドと中国、ロシアの緊密化についてトランプ氏に警告するとともに、関税をめぐって損なわれた米・インド関係の修復および、対インド関税導入の再考を求めています。

この嘆願書には、デボラ・ロス氏、ロー・カンナ氏、ブラッド・シャーマン氏、シドニー・キャマラガー=ドーブ氏、ラジャ・クリシュナムーティ氏、プラミラ・ジャヤパル氏といった著名な複数名の民主党議員らが署名していますが、共和党議員は誰も署名していません。

これらの米下院議員らは「トランプ政権の関税引き上げは貿易、雇用、そして米国の最も重要な戦略的パートナーシップの一つに打撃を与えており、インドを中国とロシアに接近させ、アジアにおける力のバランスをこの2大国に有利に転じさせる可能性がある」と警告しています。

また彼らはホワイトハウス宛ての書簡で、大幅な関税引き上げ(場合によってはインド製品の関税が最大50%上昇)がアメリカの製造業に打撃を与え、サプライチェーンを混乱させ、重要な同盟国を疎外していると指摘しました。トランプ大統領宛ての書簡には、次のように記されています;

「貴政権の最近の行動は、世界最大の民主主義国家との関係を弱め、両国に悪影響を及ぼしている。この重要なパートナーシップを修復するため、早急な措置を講じるよう強く求める。米国議会は、トランプ大統領の貿易政策によりインドがアメリカから距離を置き、中国とロシアに接近させ、アジアにおけるアメリカの地政学的立場を弱める可能性があることを懸念している。

米国議会が印・米間の緊張の高まりとその影響について懸念する主な理由は、以下の通りである。

1. 対インド関税の引き上げ

米国議会の民主党議員は、トランプ政権による関税の急激な引き上げが対インド通称関係に悪影響を及ぼしていると警告している。一部の事例においては、関税が最大50%も引き上げられ、供給網に混乱が生じ、米国の製造業に打撃を与えている。

2. アメリカの最も重要な戦略的パートナーシップの一つの弱体化をまねく

インドは、アジアにおけるアメリカの主要同盟国の一つとみなされている。しかし、トランプ大統領の経済政策、特に通商政策が原因で、インドは外交関係の多様化へと舵を切り、中国とロシアに軸足を移そうとしている。

3. インド世論の否定的な反応

高関税の導入により、インド世論における米国のイメージは著しく損なわれた。インドでは米国製品のボイコット要求が強まり、両国間の外交的緊張が高まっている。

4. 国際機関におけるインドと中露の緊密性

インドのナレンドラ・モディ首相は、SCO上海協力機構首脳会議において、中国の習近平国家主席およびロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。これらの会談は、特に2020年の印中国境紛争後、インドがアジアにおけるアメリカのライバル諸国と再び関係を深めている兆候と考えられる。

5. 米国抜きの新たなブロック形成への懸念

西側諸国のアナリストらは、トランプ大統領の政策により、インド、フランス、日本、カナダといった米国の旧来の同盟国が独自の経済・安全保障協定へと移行することになると警告している。この傾向は、世界における米国のリーダーシップを弱めかねない。

6. 米国内の雇用と国内経済への悪影響

関税引き上げは外交関係に悪影響を及ぼしたとともに、米国の製造業と労働者を逼迫している。議会は、これらの政策が輸出の減少、コスト上昇、そして雇用喪失につながることを憂慮するものである。

もっとも、この点に関しては、米国議会の民主党員の間で懸念を引き起こしている、より深い地政学的理由が存在する;

1. アジアにおけるパワーバランスの変化

インドが中国とロシアに接近すれば、アジアにおけるパワーバランスが米国にとって不利な方向に変化する可能性がある。人口の多さ、経済成長、そして地政学的に重要な立地条件を背景に、インドは中国の影響力を抑制する上で重要な役割を果たす。インドが中国やロシアとの協力関係に傾けば、QUAD(クアッド;日米豪印の4カ国による安全保障・経済協力枠組み・戦略対話)などの米国が関与する安全保障同盟が弱体化すると考えられる。

2. 中国封じ込め政策の弱体化

米国の外交政策の主要目標の一つは、経済、軍事、技術分野における中国の台頭を封じ込めることである。地域大国であるインドは、この封じ込めにおいて鍵となる役割を果たしている。特に技術、エネルギー、インフラの分野におけるインドが中国と緊密になれば、中国封じ込め戦略を無効化しかねない。

3. インドとロシアの軍事協力

インドは依然としてロシア製兵器の最大の購入国の一つである。ブラモス・ミサイル(超音速巡航ミサイル)などの共同プロジェクトを含むインドとロシアの軍事協力は、米国の懸念を掻き立てている。この協力は、ロシアによる機密技術や地域情報へのアクセスを拡大する可能性がある。

4. 米国主導の多国間同盟の弱体化

米国は、QUADやIPEF(インド太平洋経済枠組み)といった同盟の構築を通じて、アジアにおける影響力の強化を図ってきた。インドが中国とロシアに接近すれば、これらの同盟に対するインドの同調が弱まり、米国の地域政策に亀裂が生じることが考えられる。

5. 反西側組織における結束強化への懸念

インドは近年、SCO上海協力機構やBRICS新興経済国グループといった組織への参加を拡大している。中国とロシアが主導的な役割を果たすこれらの組織は、しばしば反西側的な立場をとっている。インドがこれらの組織に積極的に関与することで、国際機関・フォーラムにおける米国の立場が弱まりかねない。

6. ロシア産エネルギーに対するインドの依存度の高まり

ウクライナ紛争後、インドはロシアからの安価な石油輸入を増やした。このエネルギー依存は、インドと西側諸国の関係を複雑化し、国際危機においてインドがロシア寄りの立場を取るという事態につながる可能性がある。

7. 米国の国際安全保障への長期的な影響

新興国であるインドが中国やロシアとの戦略的協力へと向かう場合、米国主導の国際体制は深刻な脅威に直面することになると思われる。この傾向は、反米ブロックの強化と、国際機関における米国の影響力の低下をまねきかねない」 

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