欧州の鉄鋼製造業者は「中国製品の圧力とドナルド・トランプ米大統領による高関税により、鉄鋼業界が崩壊の危機に瀕している」として警告するとともにEUに対し、米国が賦課しているものと同様の関税を全ての輸入金属に課すよう求めています。
ユーロフェル・欧州鉄鋼協会は、欧州諸国から他地域への鉄鋼輸出が今年、2024年と比較して12%減少したことを明らかにしました。この減少傾向は、薄板および形鋼製品分野の両方で欧州鉄鋼に対する海外の需要が減少していることを反映したものといえます。
またこの報道によれば、2025年第2四半期の欧州からの鉄鋼製品輸出は10%減少し、その内訳は薄板製品が5%、形鋼が20%の減少となっています。また同時期の条鋼製品の中では鉄筋(-49%)と線材(-27%)の輸出が最も大きく減少しました。同時に、輸出先別では米国向けが18%、エジプト向けが41%、トルコ向けが14%、中国向けが17%減少しています。
一方でこうしたデータは、欧州の製造業者が国内市場での輸入増加と海外市場への輸出減少によるさらなる圧力に直面していることを裏付けています。
エコノミストらの間では、トランプ米大統領が2025年初頭に対米鉄鋼輸出に50%の関税を課す以前から、欧州の鉄鋼業界は既に中国からの安価な輸入品と高騰するエネルギー価格との競争に苦戦していたことが指摘されています。米国が他国、特に中国に課した関税は欧州市場への安価な鉄鋼のさらなる流入への懸念を引き起こしています。それは、鉄鋼製品がアメリカ市場から締め出されていることによります。
ドイツの鉄鋼メーカー・ティッセンクルップの上級幹部の1人、イルセ・ヒンツェ(Ilse Hintze)氏は英紙フィナンシャル・タイムズに対し、「我々には支援が必要だ。そうでなければ鉄鋼業界として生き残れないだろう」と語りました。
ティッセンクルップの鉄鋼部門の監査役会会長を務める同氏は、EU欧州連合への輸入関税の正確な水準の設定を拒否しましたが、「国内需要の低迷にもかかわらず輸入量は依然として増加している」と警告しています。
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