【ParsToday国際】イスラエルとパレスチナの戦争が続く現在、イスラム嫌悪者は、パレスチナの抵抗が正当なものであることを知られないようにするため、アラブ人やイスラム教徒を本質的に凶暴な存在であるかのように見せかける必要に迫られています。
分かりやすい例がトランプ前米大統領です。選挙戦を戦っていた2016年、トランプ氏は「イスラム教徒のアメリカ入国禁止」を公約に掲げて、一気に本命候補に躍り出ました。
しかし、トランプ氏当選の種は2001年の同時多発テロの時にすでに蒔かれていました。さらに遡れば1990年代前半、サミュエル・ハンチントンやバーナード・ルイスといった学者らが、冷戦後は西側諸国とイスラム諸国の「文明の衝突」の時代になると吹聴しました。
ハンチントン氏は著書の中で、共産主義の退場によりイスラムが米国の「好敵手」となったと記しました。イスラム諸国は人種的に米国とは完全に異なり、軍事的にもアメリカの脅威となるのに十分な力を持っていたからです。
しかし2020年の米大統領選挙時には、米国の対イスラム諸国への戦争はほぼ終結し、ムスリムを危険視するような報道もほとんどありませんでした。再選を目指したトランプ氏の選挙キャンペーンでも、前回とは違って反ムスリム発言はほとんど鳴りを潜めていました。イスラムの代わりに米国の脅威とされたのは、中国やロシアでした。
米国世論にムスリム嫌悪を再びもたらしたのは、イスラエルによるガザ攻撃でした。昨年10月、イリノイ州プレインフィールドでパレスチナ系米国人のワディア・アルフェイヨム君(享年6)が男に刺殺される事件が起きました。容疑者は「ムスリムは死ぬべきだ」と叫んでいたということです。
イスラエル政権は昨年10月7日に起きたハマスによる「アクサーの嵐作戦」を「イスラエルの9.11」と形容してきました。この不正確な比較により、イスラエルは米国を自陣に引き入れようとしてきました。しかし、この比較は受け入れられるものではありません。ハマスの目的は前世紀から続くイスラエルによる占領を終わらせることだったのに対し、9.11を起こしたアルカイダはアメリカへの敵意を拡散させることを目的としていたからです。
西側諸国がイスラエルを被害者としてみなし、パレスチナやムスリムに対して一方的な発言を繰り返したことは、イスラム嫌悪を組織的に拡大させることになりました。イスラム嫌悪に起因する犯罪が米国では180倍、カナダでは1300倍、英国では600倍増加しました。
ムスリムを標的とした犯罪が増える中、英仏独などではパレスチナ支持を表明する運動が禁止されました。それでも多くの市民が街頭に繰り出してデモを行い、警察の催涙スプレーや放水車による弾圧を受けました。
高まるイスラム嫌悪に、英議会では政府の無策を批判する議員も現れました。
ドイツの政治学者マシアス・ローへ氏は、同国内で高まるイスラム嫌悪について「社会の大部分が参加して対処する必要がある」と語っています。
昨年10月7日以降の欧州における反イスラム・反パレスチナの常態化は深刻です。パレスチナ支持者がテロ支持者という解釈は、西側諸国でメディアによってつくられた方針となっています。
イスラム研究者は、西側がイスラムを敵視する本当の理由は、イスラムが多くの人種を覇権主義勢力から解放する力を秘めているからだとみています。コーランの教えでは、他者による支配を受け入れることは、他者を支配することと同じように禁忌とされます。イスラムでは人種による区別はなく、人間の地位はその信仰心によって決まるとされています。
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