◆全国で唯一の工場
観光庁によると、東南アジアを中心とした訪日観光客は、ビザの緩和や格安航空会社(LCC)の就航などにより増えているという。平成26年には人口の9割がムスリムとされるインドネシアから約16万人、6割を超えるマレーシアからは約25万人が来日した。
イスラムの戒律では豚肉やアルコールの摂取を禁じているほか、一日5回の礼拝などの規範がある。みりんや微量のアルコールが含まれるしょうゆなどの調味料や、豚骨スープといった豚肉のエキスや豚由来の添加物などにも決まりがあるという。
このため、国内のホテルやレストランなどでハラル対応の食材や礼拝所の設置など、受け入れ体制の整備が迫られている。
同社は昨年9月、NPO法人「日本ハラール協会」(大阪市)から、食材や調味料、調理法までイスラムの戒律に合致したハラル食品の提供会社として「ハラルキッチン認証」を取得。同12月に神戸市北区の神戸フルーツ・フラワーパーク内に同じ認証を受けた工場を新設した。「ホテルや旅館向けでは全国唯一のハラル対応工場」(同社)という。
◆五輪視野、味で勝負
工場では、きんぴらゴボウやヒジキ煮、京風だし巻き、牛すき焼き風煮など40品目以上に及ぶ和総菜を生産する。食材や調味料だけでなく、キッチンもオーブンなどの調理機械まで、工場全体が豚肉やアルコールなどを排除した“ハラル化”を徹底している。
食材も地元農協と提携し、すべて地元産にこだわる。生産過程で戒律に背く部分がないか、検証できる体制にしているためだ。
しょうゆやみりん、マヨネーズなどがハラル対応の調味料という制約の中で、味に工夫を重ねた総菜は関西を中心にホテルや旅館に納入。見野裕重社長は「ハラルであることを前面に出しているわけではない。現時点では味で勝負し、取引先に受け入れていただいている」と自信を見せる。
ハラル認証は食品だけではなく、「文化」にまで及ぶ。工場ではインドネシア人のシェフら2人のムスリムを採用し、礼拝室を設けたほか、ハラル認証で必要な「イスラム委員会」も設置した。
ムスリムは世界の4分の1の人口を占めるとされ、東京五輪などを機にムスリムの訪日観光客はさらに増えるとみられており、見野社長は「東京五輪の時には月間売り上げを現在の10倍にしたい」と意気込んでいる。
「日乃本食産」が生産しているハラル対応の和総菜(同社提供)
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