30 6月 2025 - 13:36
Source: Parstoday
トランプ氏はなぜネタニヤフ氏の起訴に反対するのか?

トランプ米大統領は28日、イスラエルのネタニヤフ首相が収賄などの罪で起訴されていることについて「容認しない」と自身のSNSに投稿しました。

ロイター通信によると、トランプ氏は自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」に、ネタニヤフ氏が起訴されていることでイスラエルがハマスやイランと交渉する能力が妨げられるとした上で、「米国はイスラエルを守り支援するため、年に何十億ドルという、他のどの国に対してよりもはるかに多額の資金を費やしている」と投稿しました。

ネタニヤフ氏は2019年に収賄、詐欺、背任の罪で現職首相として初めて起訴され、翌年に初公判が開かれました。公判は現在も続いていますが、ネタニヤフ氏は一貫して無罪を主張しています。

ネタニヤフ氏の罪状は数多くに上りますが、例えば「1000番事件」と呼ばれる汚職事件では、ハリウッドのイスラエル系プロデューサーで実業家のアーノン・ミルチャン氏から70万シェケル相当の贈与を受け取った疑いがあります。

検察によると、ネタニヤフ氏は高価な酒類やタバコなどを受け取る見返りに、ミルチャン氏の経営上の便宜を図ったとされています。また「4000番事件」では、通信会社「ベズク」のオーナーとの癒着が疑われています。この会社はニュースサイト「ヴァラ」の運営元でもあります。検察はネタニヤフ氏がこの事件で数百万ドルの資金をオーナーに提供し、その見返りにヴァラが首相とその家族をメディアで擁護するよう仕向けたとしています。

これまでにもイスラエルの高官が不正行為で裁判にかけられ、有罪判決を受けたり収監されたりした例はありますが、現職の首相が裁判にかけられるのはネタニヤフ氏が初めてです。また、アメリカ大統領が直接イスラエルの内政に介入し、裁判の中止を求めるのもこれが初のケースです。トランプ大統領がネタニヤフ氏の裁判中止を公然と要求し、裁判が続くならイスラエルへの資金援助を停止することを示唆したのは、アメリカとイスラエルの関係が複雑かつ多面的であることを示すとともに、トランプ氏自身のネタニヤフ氏に対する個人的かつ政治的な見方を表しています。

ネタニヤフ氏は常にアメリカ大統領にとって信頼できるパートナーであり、第1次トランプ政権時にも、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館をエルサレムに移転するなど、ネタニヤフ氏に迎合する政策をとってきました。トランプ氏はさらに、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化(アブラハム合意)の提案も行い、ネタニヤフ氏の立場強化を図りました。現在も、トランプ氏はガザ紛争やイランとの12日間の戦争においてネタニヤフ氏の重要な支持者となっています。

トランプ氏はネタニヤフ氏をアメリカに忠実かつ有能な地域のパートナーであると強調し、あらゆる司法追及の正当性を疑問視しようとしています。この擁護は両者の個人的な関係に根ざしており、第2次トランプ政権発足後、最高潮に達しました。ネタニヤフ氏はイラン核合意からのアメリカの離脱を公然と支持しており、この無条件の支持はトランプ氏にとって「政治的忠誠」とみなされています。

また、ネタニヤフ政権のもとでイスラエルはアメリカの対イラン政策の前線として機能しており、特に現在ガザ紛争が続くこのタイミングでネタニヤフ氏の政権維持はアメリカにとって戦略的な重要性を持ちます。逆にネタニヤフ氏の裁判や権力弱体化はイスラエル内の権力バランスを崩し、軍や安全保障機関の混乱を招き、それがイスラエルの作戦能力やアメリカの地域計画に直接影響を及ぼす可能性があります。

一方で、ネタニヤフ裁判はイスラエル内でも複雑かつ根深い問題です。野党はこの裁判をネタニヤフ長期政権を終わらせるチャンスと捉え、裁判の継続を訴えています。イスラエル検事総長のアヴィチャイ・メンデルブリット氏は、ネタニヤフ氏に対する汚職告発について「完全に独立し、証拠と法律に基づいて判断する」と強調しています。

しかし、トランプ氏のアメリカからの支援停止の脅しは、同盟国の内政への介入を単に許容するだけでなく、必要とみなしていることを示しています。トランプ氏の明確なネタニヤフ支援は、個人的関係が国家間関係に取って代わり、伝統的な外交政策の基準が指導者個人の見解に左右されるという異常な外交の一例です。トランプ氏にとって「司法制度との闘い」は世界の右派指導者間の共通点かつ連帯の要素となっています。

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