Main Title

source : bitterwinter
月曜日

12日 8月 2019年

13:50:40
968312

回族居住区の「中国化」 住民の間に広がる懸念

中国の回族ムスリムの居住区から、昔ながらのイスラム様式の建造物やムスリムの信仰に関連する看板が消えている。

イスラムらしさを失う公共広場
中国北東部、甘粛 省 隴南 市 に位置する東関 村 の住民の大半は 回族 ムスリムである。村の東関ムスリム広場は住民の憩いの場だ。しかし昨年10月、広場は政府命令を受けて劇的な変化を遂げた。改築はわずか3日間のうちに行われた。

広場の名称から「ムスリム」の文字が取り去られ、「東関広場」のみになった。
名称は東関広場に変わり、広場にあった2つのイスラム様式の建物は「中国化」され、その外観は中国様式の建築物に変わった。元の外壁に掛かっていたイスラム教の教義は共産主義のプロパガンダに差し替えられた。

動画:東関ムスリム広場のドーム型の建物が中国様式の建築物のような外観に変わった。

東関ムスリム広場の外壁に掛かっていたイスラム教の教義は共産主義のプロパガンダに差し替えられた。
ある村民は広場の改装について「広場が変わってしまったのを見て、2晩眠れませんでした。これから回族に何が降りかかるのかを考えると不安です」と語った。

もはやハラールではないハラール食品街
甘粛省慶陽市の西峰 区 を通る民族路にはハラール食品街と呼ばれる一角があり、以前はアラブや回族に特有の内容のおびただしい数の看板が見られた。しかし最近になって一様に緑色の背景に漢字の書かれた看板に差し替えられた。

慶陽市のハラール食品街では回族に特有の内容の看板が漢字の看板に差し替えられた。背景は一様に緑色である。
「市の 統戦部、民政局、宗教局に加えて西街事務所からも職員がやって来て、郷 政府はこの通りの改装に重点的に取り組むのだと言いました。政府は要員を送り込んで瞬く間に看板を差し替えました」と、ある店員は言った。「共産党は、イスラム教を信じる人が増えれば、共産党に従わなくなり国家転覆をはかるだろうと懸念しているのです」。

中国北西部、陝西省咸陽市にある観光地、袁家村の回族街でも、レストランの看板にあしらわれたあらゆるアラブのシンボルが塗りつぶされたり、覆い隠されたりした。この強制的な看板変更はすべて、当局によるいわゆる「ハラールの一般化」の取り締まりの一環だ。「ハラールの一般化」とは、ムスリムのシンボルを使用したり、食品の規定以外の生活領域でもムスリムの慣習に従ったりすることを意味する。先日、街道の管理官はBitter Winterに対し、現在は顧客用の買い物袋にさえ、アラビア語で「ハラール」と書いてはいけないのだと話した。

回族の居住区に忍び寄る恐怖
昨年9月、甘粛省平涼市轄の華亭 県 に建つモスクの入口からイスラム教のシンボルが強制的に撤去された。回族住民にとってシンボルの撤去は、今後さらに悲惨な出来事が待ち受けていることを意味する。ある地元のムスリムはおおかたの地域住民の感情を代弁した。「今の流れからすると、中国共産党 はこれから回族のモスクを一掃しようとしているのでしょう」。

華亭県のモスクの入口。イスラム教のシンボル撤去の前と後の様子。
昨年7月、地元政府はモスクに国旗を掲揚した。そして祈りの前に中国共産党の政策が宣伝されるようにした。アラビア語での礼拝は禁じられたため、全員中国語で祈らなければならない。

平涼市の住民たちはBitter Winterに不安を語った。女性のスカーフ着用やラマダーン中の断食を禁じるなど、新疆ウイグル自治区 のムスリムに課された制約や迫害が甘粛省でも行われるのではないか。インタビューに応じたある人が聞いた話では、新疆では断食期間中、回族の労働者が働く部署の入口に彼らの食事用としてミネラルウォーターやヒマワリの種などの軽食類が置かれたという。食べない者は処罰されるのだ。

別の住民は、新疆の全回族世帯が訪恵聚(「訪民情、恵民生、聚民心(人々を訪ね、人々に利益をもたらし、人々の気持ちに寄り添う)」を意味する頭字語。新疆のムスリム世帯を訪ねてデータを収集する政府設立のチーム)によって当局の監視下にあるのだと付け加えた。男性は新疆で行われているいわゆる「ホームステイ」プログラムにふれ、「当局は『回族の人々と衣食住を共にする』と言うのですが、実際は回族の言動を逐一監視しているのです」と語った。

「新疆でも地域によっては、当局が回族の家庭にブタを送り付け、政府のために飼育するよう要求するところさえあるようです」と男性は言った。また、甘粛省政府に改装を強いられたことで不安になり、モスクに礼拝に行くのを止めたとも語った。

イスラム関連の店舗名を差し替え
中国北東部、吉林省の回族住民もまた、困難に直面している。数々の制約が課される中、経営する店舗の名称変更も求められている。

延吉市の「イスラム火鍋城」は20年以上前に開店した古くからのレストランだ。3月に地元政府が「イスラム」を意味する漢字3文字の削除を命じたため、今ではレストランは「回回営火鍋城」と呼ばれている。

吉林省船営区の看板「伊斯蘭夢婚紗撮影(イスラム夢のウェディングドレスと婚礼写真)」は、「イスラム」を意味する2文字目の漢字「斯」を削除し、「伊蘭夢婚紗撮影」に変えられた。

同じ理由から、長春市の「穆斯林焼肉」は、「ムスリム」を意味する1文字目の漢字「穆」を削除して「斯林焼肉」に変えられた。間もなく漢字「斯林」も禁じられ、経営者は看板の表記を「大塊肉焼肉」に変えざるを得なくなった。

レストラン「イスラム火鍋城」は「回回営火鍋城」への店名変更を命じられた。

「伊斯蘭夢婚紗撮影」は政府の介入を経て「伊蘭夢婚紗撮影」になった。

「穆斯林焼肉」は「大塊肉焼肉」という店名に変わった。
ある店舗経営者がBitter Winterに語ったところによると、政府は店名に「ムスリム」、「イスラム教」、「ハラール」といった語句を使うことを禁じたという。吉林市の「伊斯蘭堡飯店(イスラマバード飯店)」は「伊香蘭堡」に変わった。政府は特に民族的な意味合いの強い名称を許さないからだ。

馬夏古による報告