UAEは先月、トランプ氏がイラン最高指導者ハーメネイー師に宛てた書簡をイラン側に手渡しましたが、イランはその返答をオマーンに託しました。イランがUAEを信用しなかった理由については、UAEがイスラエルと「国交」を結んでいることがあるとされています。
UAE大統領の外交顧問を務めるアンワル・ガルガシュ氏は先月、公式代表団を率いてテヘランを訪問し、イランのアラーグチー外相と会談しました。この会談でガルガシュ顧問はアラーグチー外相に対し、トランプ米大統領がハーメネイー師に宛てた書簡を手渡しました。
イランの政治専門家ラスール・サリーミー氏は、「UAEはアブラハム協定に署名することで対イスラエル関係を正常化したが、これはイランの視点からすれば、地域における主な敵と連携することを意味するものであり、この関係はUAEがイランにとって中立的な仲介者にはなりえないことを意味している」との分析を示しています。
UAEの調停実績は限定的で信用できない
サリーミー氏はさらに、「イランと米国との仲介で長期間にわたり成果を上げてきたオマーンとは異なり、UAEはこの分野での経験があまりなく、外交仲介者というよりは経済面での勢力として認知されている。多くの専門家も、UAEがトランプ大統領の書簡を仲介したのは、対イラン関係というよりも、米国との緊密な関係による可能性が高いと指摘している。実際、UAEはここ数十年、特にペルシャ湾のイラン領3島(大トンブ島、小トンブ島、アブー・ムーサー島)をめぐるイランとの地域紛争に大きく関与してた」と語りました。
イラン国内における政治・戦略的事情
サリーミー氏はまた、UAEを仲介国に指名しないイランの決定には、国内事情も関係していると指摘します。軍事手段を示唆したトランプ大統領の脅迫と核問題をめぐる緊張がトップニュースとして報じられる中、イスラエルと緊密な国との協力はいずれも、イラン国内での政治的批判を招く可能性があるということです。
オマーンの中立性と独立した外交政策
サリーミー氏はさらに、オマーンはUAEとは異なり、中立的な外交政策を踏襲し、地域の対立への関与を避けてきたとし、「オマーンはイランとの関係を維持し、対イスラエル関係正常化を謳ったアブラハム合意などの反イラン連合への参加も拒否している。この中立性は、オマーンがホルムズ海峡に位置するという同国の地理的位置により益々強まっている。ホルムズ海峡の安定は、イランと米国の両国にとって死活問題である」と指摘しました。そして、そうした要因から、オマーンには「緊張緩和に向けた強い動機があり、その外交方針への信頼が高まることになっている」としました。
イランとオマーンの歴史的関係と相互信頼
サリーミー氏は続けて、「イランとオマーンの関係は1979年のイスラム革命以前にまで遡り、制裁期間中も維持されてきた。実際、オマーンはイラン・イラク戦争中は中立を保ち、イランとアラブ諸国との関係改善を支援してきた。この相互信頼により、オマーンはイランにとって順当かつ当然の選択肢となっている」と述べました。
そして、「イランがUAEではなくオマーンを選んだのは、間接外交で独立性を維持しようとする自らの戦略の一環である。イランはこの決定によって、米国やその同盟国が押し付けるルートを受け入れる意思がないことを示すとともに、これを米国の圧力に対抗し対等な立場を維持することを目的とした『積極的外交』であると考えている」と結論付けています。
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